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ク・ジョンア《ウスモス》— 見ずに出てきてしまうかもしれない展覧会

作品35点が展示室の外にも散らばっている。作家は、来場者がそれを見つけられない可能性まで作品に入れておいた。

ク・ジョンア ウスモス 展覧会の図解 — 題は「ウス」と「コスモス」を重ねた言葉で、作品はM2展示室とロビー、美術館の外の擁壁、古美術常設展示室の四つの空間に散らばっている

2026.09.02 ・SUE GALLERY 編集部

リウム美術館の建物の外に、黒い石を積んでつくった擁壁がある。その石のあいだにクリスタル50個が埋まっている。作家がひとつずつ自ら差し込んだ。ただしいつも見えるわけではない。立っている場所とその日の天気、日の差す角度が噛み合ったときだけ光る。そのまま通り過ぎる人のほうがずっと多いだろう。ク・ジョンアは、見えない可能性まで作品の一部としてひらいておいた。

ひと目でわかる
  • 《ク・ジョンア:ウスモス》 ・リウム美術館 ・ 2026.9.5(土)– 12.27(日)
  • ク・ジョンアの 国内最大規模の個展 ・1990年代の初期作からリウムのための新作まで 35点
  • 「ウスモス」= 作家のつくった言葉 「ウス(OUSSS)」+ 宇宙「コスモス」
  • 作品はM2展示室 ・ ロビー ・美術館の外の擁壁 ・古美術常設展示室にまで散らばっている
  • 新作 〈モビウス〉は幅8mのステンレススチール ・上から見れば無限大の記号(∞)
  • 〈マグネット・シティーズ〉は接着剤なしに磁力だけで立つ磁石の壁9点
  • ドローイング 〈R〉1001点は箱77個に分かれていて、一度にすべては見られない
  • 観覧料 18,000ウォン ・火〜日 10:00–18:00 ・ 月曜休館 ・券売締切17:30
35点 ・30年分の仕事
50個 ・擁壁に隠れたクリスタル
8m ・〈モビウス〉の幅
1001点 ・ドローイング〈R〉

ク・ジョンアはどんな作家か

今年 59歳のインスタレーション作家である。2024年、第60回 ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館 の代表作家として《オドラマ・シティ》を発表した。そのときも、目に見えないものを扱った。韓国人と海外養子、北朝鮮出身の住民らから 香にまつわる話600編を集め、16の香にして会場に放った。30年のあいだ媒体は変わり続けたが、扱う対象は一か所にあった。出典:ヘラルド経済 2026.9.1 記者懇談会の記事 ・第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館《ク・ジョンア – オドラマ・シティ》公式紹介

リウム美術館のキム・ソンウォン副館長は8月31日の懇談会でこう整理した。「ク・ジョンアは絶えず仕事のかたちを変えてきましたが、隠れた可能性をひらこうとする試みだけは30年続いています。」同じ場で彼は「彼女の仕事を長く見つめていると、変化より持続のほうが先に見えてくる」とも述べた。

作家本人の説明はもっと短かった。「見るということは、理解すること、知ることだと思う。」そして自分を「少しおかしな作家」だと紹介した。実際、会場には幽霊のキャスパーに似た形が床に敷かれている。

彼女が長く抱えてきた問いも懇談会で出た。なぜ1秒前と1秒後がどちらも同じでないのか、というものだった。巨大な概念のように聞こえるが、彼女がそれを扱う仕方はたいてい小さく静かである。

「ウスモス」とはどういう意味か

二つの語を重ねた言葉である。 「ウス(OUSSS)」は作家が 1990年代半ばに自らつくった単語で、音であり接頭辞であり接尾辞でもある。意味がひとつに固定されず、ほかの語と結びつき続ける。ここに宇宙を意味する 「コスモス(COSMOS)」が付いて ウスモス(OUSSSMOS)になった。異なる事物と力、記憶と時間が出会い散らばりながら関係をつくっていく彼女の仕事の世界を指す名である。出典:ヘラルド経済 2026.9.1 ・マネートゥデイ 2026.8.31 — リウム美術館提供の展覧会説明

辞書にない言葉なので、はじめて聞くと途方に暮れる。ところが展覧会を回っていると、この言葉が至るところに埋まっているのが見えてくる。新作の題〈モビウス〉の原語はMOBIOUSSSだ。数学者メビウスに「ウス」を重ねて付けている。

「ウス」はときにエネルギーと物質の名になり、ときにはアニメーションの主人公になる。ブロンズの彫刻〈強勢S〉の形もここから出たし、ヴェネツィア韓国館で香を放っていたディフューザーの彫刻の名もウスだった。ひとつの語が30年、かたちを着替えながら生き延びたというより、むしろ増殖し続けたというほうが当たっている。

会場では何を見ることになるのか

まず出会うのは大型の曲面の構造物 〈グラヴィタ〉(2025)である。スケートパークをひと切れ剥がしてきたようなかたちに 蓄光顔料が塗られていて、照明のついているあいだ光を含み、暗くなると青い光を放つ。奥へ入ると幅 8mのステンレススチール〈モビウス〉(2026)がある。横から見ればトンネルのようだが、上から見下ろせば 無限大の記号(∞)である。出典:ヘラルド経済 2026.9.1 ・マネートゥデイ 2026.8.31 — 8月31日の報道公開およびリウム美術館提供資料

作品画面で見るものどこに
〈グラヴィタ〉 Gravita・2025スケートパークを剥がしたかたち ・蓄光顔料なので暗くなると青い光ロビー
〈モビウス〉 MOBIOUSSS・2026幅8m ・上から見れば∞ ・角度によって自分が映ったり消えたりするM2
〈マグネット・シティーズ〉 2018、2025 ・9点数千の磁石が接着剤なしに磁力だけで壁・柱になるM2
〈無題〉 1998キューブのなかに立てた鉛筆の芯57本 ・ドンと踏めば崩れそうだM2
〈R〉 2005 – ・ドローイング1001点木箱77個 ・壁に掛かる3点は毎月替わる三つの空間
〈わたし&あなた〉 2026床の赤と青の幾何学模様 ・曲線に点を打てばキャスパーになるM2
〈強勢S〉 Gangse Sかかとと髪だけで立つブロンズ ・重いのに浮いて見えるM2
〈テラ・インコグニタ〉 20263D映像〈ウス〉(2014–2022)から派生した映像ザ・ウォール
〈リアリティ・アップグレード & エンド・アローン〉 2003/2026石のあいだのクリスタル50個 ・日の角度が合わないと見えない美術館の外
〈デンシティ, GITD〉 2025磁場で空中に浮かぶ石 ・白磁のあいだに置かれた古美術常設展示室

出典:ヘラルド経済・マネートゥデイ 2026年8月31日の報道公開の取材およびリウム美術館提供資料。全35点のうち報道で確認できた作品のみをまとめた。〈R〉の壁面のドローイング3点は作家の選択によって毎月入れ替わるため、訪問の時期によって違う絵が掛かる。

〈マグネット・シティーズ〉の前ではしばらく立ってみる値打ちがある。数千の小さな磁石が接着剤なしに互いを引き合い、壁面と柱のかたちで立っている。支える構造物もない。目に見えるのは磁石の塊だが、そのかたちを実際に支えているのは何か。目に見えない力である。

〈奇人相逢〉は配置そのものが仕掛けだ。もともとひとつの画面にあった二人のキャラクターを二点に割ったうえで、右を向くキャラクターを左に掛け、左を向くキャラクターを右に掛けた。あいだにはほかの作品が挟まっている。二点とも見終えてはじめて、二人が向かい合っていたことに気づく。

なぜ美術館の外と古美術展示室にまで出ていくのか

見慣れていたりささやかだったりして目を向けられなかったものを、現すためである。だから作品はM2展示室を越えて ロビー、美術館の外の壁、古美術常設展示室にまで出ている。数百年前の白磁が置かれた場所に、磁場で浮かぶ石 〈デンシティ, GITD〉(2025)と鉱物の彫刻 〈ディアレスト・モモ〉(2025) など 三点が予告なく割り込む。出典:マネートゥデイ 2026.8.31 ・ヘラルド経済 2026.9.1 — リウム美術館キム・ソンウォン副館長の説明および展覧会の構成

だから観覧の仕方がふだんと変わる。番号を追って順に回る展覧会ではない。散らばった手がかりを見つけていくほうに近い構造だ。

あなたが古美術常設展示室に入って、白磁のあいだに浮かぶ石を見つけたなら、その瞬間に二つの時間がひとつの場所で重なる。リウムはこれを「過去と現在がひとつの場所で重なる瞬間」と説明した。

外の擁壁のクリスタルは、この態度をもっとも突き詰めた作品である。見えることもあれば、ついに見えないこともある。作家はその確率そのものを作品に含めた。

作家はなぜこれほど脆い素材を使うのか

脆く見えることと脆いことは違うと見ているからだ。鉛筆の芯57本を接着剤なしに立てた 〈無題〉(1998)について、作家はこう語った。 「物質的には脆いけれど、強力な産業のシステムのなかでつくられたものであって、ただ弱いものとしてだけ見てはいけない。」 素材を選んだ基準も明かした。「美術の素材としては見慣れないのに、たやすく手に入る工業製品を使いたくて選んだ素材たち」だという。出典:ヘラルド経済 2026.9.1 — 2026年8月31日 リウム美術館 記者懇談会の発言

では彼女が選んだ素材はどんなものだったか。初期作にはナフタリンと角砂糖が登場した。時が経てば消えたり溶けてなくなったりするものだ。その系譜に鉛筆の芯と磁石が置かれる。

ドローイング〈R〉も似た態度で掛かった。2005年から積み重ねてきた1001点が今回はじめて一堂に集まったのに、いざ全体を一度に見る方法はない。箱77個が三つの空間に分けて置かれ、壁に掛かるのは毎月三点だけだ。

だから二度行けば別の展覧会になる。12月まで四か月近く続くので、季節が変わってからまた行ってみる方法もあるだろう。

いつ、どこで見られて、いくらか

2026年9月5日から12月27日まで リウム美術館 M2が中心である。観覧料は 18,000ウォンで、この券でM1の古美術常設展までいっしょに見る。観覧時間は 火〜日 10:00–18:00, 券売締切17:30, 月曜休館である。予約は観覧日の 14日前から1人4枚までひらき、予約できなかったならロビーの案内デスクで現場発券できる。出典:リウム美術館 公式 訪問案内およびオンライン予約・購入画面(leeumhoam.org・ticket.leeum.org、2026.9.2 確認)

M3でひらかれる《別の空間のなかへ》まで同じ日に見るつもりなら、全展覧会の共通券25,000ウォンがある。単券を二枚買えば36,000ウォンなので、11,000ウォン残る。ただしその展覧会は11月29日に終わる。

毎月最終週の水曜は文化のある日なので50%の割引がつく。会期のなかに入る日は9月30日と10月28日、11月25日である。割引の重複はできない。

無駄足になりやすい日もある。9月の休館の月曜は7・14・21・28日で、秋夕当日である9月25日金曜も扉を閉じる。連休のうち9月24日木曜と26日土曜は通常開館する。

2026年9月2日のリウム公式案内による。 料金・時刻表・休館日は会期中に変わることがある。リウムの告知によれば 9月6日日曜19:00から9月8日火曜09:00までオンライン予約が停止され、開幕日である 9月5日にはM2 2階の〈ドリーム・ハウス〉が16:30までしか ひらかない。訪問案内ページの「観覧料金」欄は、この記事を書いている時点までク・ジョンア展を反映していないため、価格は予約画面で確認した。出発前に リウム美術館 訪問案内をもう一度ひらいてみることをすすめる。

フリーズ・ウィークにくっつけて行ってもよいのか

重なる日は一日だけである。フリーズ・ソウルは 9月5日土曜に終わり、Kiafソウルは 9月6日日曜までだが、ク・ジョンア展は9月5日に扉をひらく。リウムは18時に閉じ、フェアは夕方までひらいているので リウムを先に見てCOEXへ渡る 順序が自然だ。COEXから漢江鎮駅まで地下鉄で30分ほどかかる。出典:リウム美術館 展覧会詳細の開幕日 ・Kiaf・フリーズ・ソウル 2026 公式日程(9.2–9.6、COEX)

急ぐ必要はない。この展覧会は12月27日まで続き、先に記したとおり毎月掛かるドローイングが替わる。フェアの人波を避けて平日の午前に行くほうが、この展覧会には合うだろう。

目に見えない力や、見落としやすいものを扱う仕事は、人が少ないときのほうがずっとよく見える。磁石が互いを支え合っている壁の前に誰もいないとき、その前に5分ほど立っていることが、この展覧会では観覧の方法に近いのではないだろうか。

明洞 SUE GALLERYも同じ期間、扉をひらく。月曜から日曜まで11:00–19:00で、入場料と予約がない。漢南から明洞までは地下鉄で20分もかからないので、大きな展覧会を見て下りてきて、小さな個展をひとつ足すのにちょうどよい。

フリーズ週間の全体の日程は Kiaf・フリーズ・ソウル 2026 完全ガイドにある。同じ期間の美術館は フリーズ・ウィークに見ておきたいソウルの美術館の展覧会、券なしで回るコースは ネイバーフッド・ナイト タイムテーブルフリーズを見たあと明洞までで扱う。国立現代美術館のスゥ・ドーホー展の料金は スゥ・ドーホー展を8,000ウォン払わずに見られる日、ソウルのギャラリーの曜日別開館表は ソウルのギャラリーおすすめにある。 開催中の展覧会アクセスもあわせて見たい。

よくあるご質問

ク・ジョンア《ウスモス》はどんな展覧会ですか。
ク・ジョンアの国内最大規模の個展で、2026年9月5日から12月27日までリウム美術館でひらかれます。1990年代の初期作からリウム美術館のために制作した新作まで、計35点を発表します。作品はM2展示室だけでなくロビーと美術館の外の擁壁、古美術常設展示室にまで散らばっており、美術館全体が会場になります。
「ウスモス」とはどういう意味ですか。
作家が1990年代半ばにつくった単語「ウス(OUSSS)」と、宇宙を意味する「コスモス(COSMOS)」を合わせた言葉です。「ウス」は音であり接頭辞であり接尾辞でもあり、ひとつの意味に固定されずほかの意味と結びつき続けてきました。ウスモスは、異なる事物と力、記憶と時間が出会い散らばりながら関係をつくっていくク・ジョンアの作品世界を指します。
どの作品に注目すればよいでしょうか。
幅8メートルのステンレススチールの新作〈モビウス〉は、横から見ればトンネルのようですが、上から見下ろせば無限大の記号になります。〈マグネット・シティーズ〉は数千の磁石が接着剤なしに磁力だけで壁と柱のかたちを成した連作で、〈無題〉はキューブのなかに接着剤なしで立てた鉛筆の芯57本です。美術館の外の擁壁にはクリスタル50個が隠れていますが、立っている場所と天気、日の角度が合わないと見えません。
観覧料と観覧時間はどうなっていますか。
単券18,000ウォンで、この券でM1の古美術常設展までいっしょにご覧いただけます。観覧時間は火曜から日曜の10時から18時までで、券売は17時30分に締め切られます。毎週月曜は休館で、2026年の秋夕当日である9月25日も扉を閉じます。毎月最終週の水曜、文化のある日には50%の割引が適用されます。
予約なしで行けますか。
行けます。リウムの予約案内は、未予約の方もロビーの案内デスクでチケットを発券したうえで観覧できると記しています。オンラインの個人予約は観覧日の14日前から1人4枚まで可能で、10名以上の団体は必ず事前にオンラインで予約する必要があります。2026年9月6日19時から9月8日9時までは、サーバー移転の作業のためオンライン予約が停止されます。

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