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展覧会スポットライト

アギジャギハン《A Dreaming Wendy》

落書き一枚から始まった子ども、ウィンディ — 明洞 SUE GALLERY での初個展。

アギジャギハン個展《A Dreaming Wendy》— 2025年11月1日から14日まで、明洞 SUE GALLERY、個展、無料観覧

2026.08.19 ・SUE GALLERY 編集部

アギジャギハンは、自分のなかに残っている子どもを描く作家である。個展 《A Dreaming Wendy》は2025年11月1日から14日まで、ソウル・明洞の SUE GALLERYで個展として開かれた。眠る息子を落書きのように描いた一枚から生まれたキャラクター 「ウィンディ(Wingdy)」が、絵画・イラスト・デジタル・インスタレーションへ広がっていく過程を一堂に集めた、作家にとってはじめての個展だった。SUE GALLERYの作家インタビューと展覧会記録から、その世界をたどってみる。

ひと目でわかる
  • 展覧会: アギジャギハン個展《A Dreaming Wendy》 ・2025.11.01–11.14 ・個展
  • 会場: SUE GALLERY(ソウル特別市 中区 南山洞2街、明洞駅近く)・観覧料なし
  • 主人公: ウィンディ(Wingdy) — 作家の「内なる子ども」を形象化したキャラクター
  • 中心となるイメージ: 空と雲(悲しみのないユートピア)・ 絵の木(種から森へ)
  • 代表作: 〈幸福な痛み〉(162.3×130.3cm) · 〈雲が抱いた記憶〉(90.7×116.8cm)
  • 初期の 色鉛筆ドローイングから絵画・デジタル・グッズまであわせて公開
  • 全記録は 展覧会ページ作品ページ

アギジャギハンはどんな作家ですか。

デザインを専攻し、イラスト・デジタルの仕事をしてきたのち、絵画作家に転じた作家である。自らの「内なる子ども」であるウィンディ(Wingdy)を主人公として、愛と成長、慰めを描く。出典:SUE GALLERY 作家インタビュー(アギジャギハン・2025)

本名はハン・ヨンジン。幼稚園の頃から夢はいつも「画家」だったが、苦しい家計と現実的な悩みの前で絵画科への進学を諦め、デザインを選んだ。デザイン会社でイラストとデジタルの仕事を続けるあいだも、「いつかちゃんと絵を描きたい」という渇望は消えなかったと語る。

転換点は結婚と出産だった。家庭をもち子を産んだあとに感じた安らぎと愛の感情のなかから、いまの仕事が始まった。その後、公募展の受賞といくつもの展示への参加を経て絵画作家としての活動を広げ、タイのあるアートコレクターが作品を所蔵した縁でタイの展示に招かれ、ウィンディというキャラクターのおかげで日本で三人展もひらいた。

「アギジャギハン」という作家名はどうつけたのですか。

小さくかわいらしく愛らしいものを好む性分から出た名である。固有語の「アギジャギ(こぢんまりとして愛らしい)」に、本名「ハン・ヨンジン」の姓(韓)を添えて「アギジャギハン(韓)」として活動している。出典:SUE GALLERY 作家インタビュー(アギジャギハン・2025)

名のつけ方が、そのまま制作の態度でもある。大げさな宣言の代わりに、小さくやさしいものを最後まで手放さず、そこに自分の名を一文字のせて自分のものにする方法。画面のなかの小さな存在がとりわけ細やかに描かれるのも、同じ場所から出てくる。

ウィンディ(Wingdy)とは誰ですか。

作家の「内なる子ども」を形象化したキャラクターである。ある日、眠る息子の姿を落書きのように描いた一枚の絵から生まれ、その後は絵画・デジタル・グッズへと広がって、作家自身の成長と記憶を宿す象徴になった。出典:SUE GALLERY 作家インタビュー(アギジャギハン・2025)・展覧会ページ《A Dreaming Wendy》

だからウィンディは童話の主人公ではない。作家の自画像である。作家はこのキャラクターを通して現実と夢、記憶と感情の境界を自由に行き来しながら「感性的な自画像」を築いてきた。媒体が色鉛筆からカンヴァスへ、さらにデジタルの画面へ変わっても、核にある情緒 — あたたかさと純粋さ、愛と幸福 — はそのまま残る。

「ウィンディは単にかわいいキャラクターではなく、私が夢見る世界をひらく存在であり、作家としての成長と記憶、感情を込めた象徴です。」

《A Dreaming Wendy》はどんな展覧会ですか。

アギジャギハンにとって初の個展で、2025年11月1日から14日まで明洞のSUE GALLERYでひらかれた。初期の色鉛筆ドローイングから絵画・イラスト・デジタルの仕事、インスタレーションまで、ひとつのキャラクターから伸びた仕事のすべてを一堂に集めた。出典:SUE GALLERY 展覧会ページ《A Dreaming Wendy》・作家インタビュー(2025)

作家は、はじめての個展なのだから自分のなかのすべてを見せたかったと語る。絵画とイラスト、デジタルの仕事とグッズが、形式は違っても結局は同じ世界観から派生したひとつの物語であることを、あわせて見せるためだった。

では、ウィンディはどこから来たのか。とくに本展ではじめて公開されたのが初期の色鉛筆作品である。色鉛筆ならではのやわらかな質感とあたたかな色合いは、作家がもっとも率直に内面を表していた時期の痕跡を留めている。作家の言葉では「当時は今よりずっと境界なく、自由に描きたいように描いていた頃」の仕事で、大きさは小さくとも本人にはもっとも大切な記録だ。

明洞のSUE GALLERYの会場で、手のひらほどの正方形のカンヴァス画を両手で掲げている様子。後ろの白い壁に掛かった小さな作品二点と丸いテーブルがぼんやり見える
《A Dreaming Wendy》会場・SUE GALLERY

なぜ空と雲が繰り返し登場するのですか。

作家の夢見るユートピアを象徴しているからである。悲しみや痛みのない場所、いつも笑いと肯定に満ちた世界を、空と雲のイメージで描く。出典:SUE GALLERY 作家インタビュー(アギジャギハン・2025)

作家は幼い頃から「人が憎み合わず、愛し助け合って暮らす童話のような世界」を夢見ていて、そんな世界を自分の子にも見せたかったと語る。画面のあちこちを満たす綿雲は、その願いの風景である。だからだろうか、作品を好む人のなかには「絵から幸福と慰めをもらう」と言う人が多い。

ただしこの世界が、ただ甘いだけのものではない。出品作の題がそのことを語っている — 〈幸福な痛み〉, 〈忍耐のための努力〉のように、喜びと痛みがひとつの画面に重なる瞬間もあわせて置かれている。

会場の「絵の木」のインスタレーションとは何ですか。

「育つ木」を題材にした小さなインスタレーションである。小さな種が育って木になり、枝を伸ばして森を成す過程を通して、来場者が作家の絵の世界が育ってきた軌跡をともに経験できるようにした仕掛けだ。出典:SUE GALLERY 作家インタビュー(アギジャギハン・2025)

作家のノートはこの木を「私の努力と夢が込められた小さな木であり、参加型の象徴物」と説明する。木には実のように小さな絵が掛かり、来場者はそのうちひとつを自分で選べるようにした。小さな絵も時が経つにつれて意味と価値が育つということ — 絵の成長と人の成長は違わないということ — を手に握らせる方法である。

種・木・森という構造は、展覧会全体の骨組みでもある。たまたま咲いた落書き一枚が創作の種となり、時期ごとに違う感情とかたちへ変化しながら小さな木へ育ち、イラスト・絵画・デジタル・グッズが異なる枝のように伸びてひとつの森を成す。

どんな作品が出ましたか。

アクリル・ガッシュの絵画が中心である。〈幸福な痛み〉(162.3×130.3cm)、〈雲が抱いた記憶〉(90.7×116.8cm)、〈香しい思い出〉(60.6×72.7cm)と、40×40cmの連作〈潜在意識の空間〉〈白いペルソナ〉〈夢見るペルソナ〉などが紹介された。出典:SUE GALLERY《A Dreaming Wendy》出品作品記録(2025)

この森はなぜ育ち続けるのか。もっとも大きな作品である 〈幸福な痛み〉は、カンヴァス規格で100号(F100)にあたる大きさで、雲の上に置かれた子どもの表情と正面から向き合わせる。反対に 〈忍耐のための努力〉(34.8×27.3cm)のように手のひらほどの画面も一緒に掛かり、動線のなかに大きさのリズムが生まれる。

同じ40×40cm規格の正方形三点は、題からしてつながっている。「潜在意識の空間」から「白いペルソナ」を経て「夢見るペルソナ」へ — 無意識から出発して外へ現れる顔に至る順で読めば、キャラクターがどのように作家の自画像になるのかがはっきりする。出品作の全体は 作品ページで確認できる。

アギジャギハン個展のポスター — 雲のなかの黄色い髪の子どもの絵の上に、2025.11.1-11.14、Dreaming Wingdy 夢見る子どもウィンディと記されている
《A Dreaming Wendy》展覧会ポスター・SUE GALLERY

この展覧会はどう見ればよいですか。

「かわいいキャラクター展」としてだけ見ないほうがいい。作家にとってこの仕事は、幼い頃に覆っておいた内面の傷をいまのまなざしであらためて見つめ、成長と癒しを経験する過程だった。出典:SUE GALLERY 作家ノート(アギジャギハン・2025)

作家がとりわけ伝えたかったのは、母になった時間についての話である。子を産む瞬間から多くの人がしばし自分の声を失い、子の目で生きることになるが、その時間は終わりではなく、また別の成長の出発点だということ。作家自身も「「私」という存在が一時的に消えたような気持ち」を通り過ぎて、新しい価値とより大きな成長を見つけたと語る。

「私たちは誰もが成長する存在で、止まらずに挑み続け発展していくとき、自分の人生のなかに新しい意味と幸福を見出せると信じています。」

絵のなかの妖精と子ども、植物と人形は、私たち誰もがもつ内面の純粋さと傷、恋しさを思い起こさせる仕掛けである。そう見れば、この展覧会はひとりの作家の成長記であり、来場者それぞれの「内なる子ども」に出会う場になる。若手作家の仕事をどう見て、どう手にできるのかが気になるなら 若手作家の作品の買い方もあわせて読んでみるとよい。

SUE GALLERYでは何が見られますか。

SUE GALLERYはソウル・明洞(中区 南山洞2街 24-9)の若手作家を専門とするギャラリーである。毎日11:00–19:00に開廊し、 入場料も予約も不要で 観覧できる。出典:SUE GALLERY アクセス

あなたにも、落書きのように始めておいてまだ名をつけていないものがあるかもしれない。ウィンディもはじめはそんな一枚だった。

2023年4月に開廊して以来、アギジャギハンをはじめ若手作家の個展を続けている。《A Dreaming Wendy》の全記録は 展覧会ページ作家インタビューで見られ、いま開催中の展覧会は 展覧会一覧で確認できる。道順は アクセスに、明洞で無料で見られるほかの展覧会は 明洞・無料で見られる展覧会ガイドにまとめてある。

よくあるご質問

アギジャギハン《A Dreaming Wendy》はいつ、どこで開かれましたか。
2025年11月1日から11月14日まで、ソウル・明洞のSUE GALLERYで個展として開かれました。現在は終了した展覧会で、記録はSUE GALLERYの展覧会ページでご覧いただけます。
「ウィンディ(Wingdy)」とはどんなキャラクターですか。
作家の「内なる子ども」を形象化したキャラクターです。眠る息子を落書きのように描いた一枚の絵から生まれ、いまは作家自身の成長と記憶、感情を宿す象徴へと広がっています。
アギジャギハンの本名と作家名の由来が知りたいです。
本名はハン・ヨンジンです。小さく愛らしいものを好む性分から出た固有語「アギジャギ」に、自身の姓(韓)を添えて「アギジャギハン(韓)」として活動しています。
作品はどんな素材で描かれていますか。
本展の絵画はほとんどがカンヴァスにアクリル・ガッシュで描かれています。初期の色鉛筆ドローイングとデジタルプリントの仕事、グッズもあわせて紹介されました。
SUE GALLERYの展覧会は無料で見られますか。
はい。SUE GALLERYは明洞駅近くの若手作家を専門とするギャラリーで、入場料も予約も不要でご覧いただけます。開廊時間は毎日11:00–19:00です。

展覧会情報・ご利用案内

展覧会:アギジャギハン個展《A Dreaming Wendy》(2025.11.01–11.14 ・個展)
会場: SUE GALLERY、ソウル特別市 中区 南山洞2街 24-9(明洞駅近く)
観覧:月〜日 11:00–19:00 ・入場無料
お問い合わせ:Instagram @suegallery.23

会期中に案内された観覧時間は、展覧会ポスター記載の10:30–18:30でした。現在のギャラリーの通常の開廊時間は11:00–19:00です。ご来場前に アクセスで最新の情報をご確認ください。

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