デジタルドローイングを通して内面の感情と思索を繊細に解きほぐすイラストレーター、ナム・ヨンヒの初個展「わたしは夢」を開催します。本展は、作家の癒しと飛翔の過程をそのまま湛えた新作20点あまりを中心に構成されます。iPadで制作するデジタルイラストレーターのナム・ヨンヒは、もともと社会福祉学を専攻しましたが、専攻外という限界を自ら越えてきた特別な経歴をもつ作家です。学生時代のアルバイトで始めたデジタル画像の仕事に面白さを見出し、独学でグラフィックデザインを身につけたのち、ゲームのグラフィックデザイナーとして本格的に創作の道に入ります。しかしその後に訪れた鬱によって長く筆を置くことになり、ふたたび絵を手にするまでに10年あまりの時間を要しました。「空虚さのなかで絵をまた描きはじめ、インスタグラムで一日一枚を上げると決めた新年が、私の人生の転換点でした」と語ります。絵は作家にとって日記帳であり鏡でした。海、クラゲ、イグルー、イルカなど作品のなかのオブジェクトは、単なる装飾ではなく感情の象徴です。
展覧会名「わたしは夢」は、作家の生と創作の旅を凝縮した主題であり、「夢を見るわたし」であると同時に「飛びあがるわたし」という意味をあわせもちます。過去の暗がりを踏み越え、ふたたび光へ向かっていく作家の内面の風景を描き出します。
デジタルアートが手軽な技法と軽い消費の言葉として誤解されやすい時代に、ナム・ヨンヒの仕事はその流れとは明らかに異なる肌理をもっています。その作品は感情の凝固物であり、デジタルの道具による自伝的な物語構築の事例として注目に値します。
ナム・ヨンヒ個展「わたしは夢」